巧みな動きとは 予測的姿勢調節からみたスポーツコンディショニング |
ボクシングやサーフィンは全く異なるスポーツですが、それぞれチャンピオンの治療をしています。
選手から細かい動きについて教わりながら、どの関節が動かなければならないのかを検討し、実際選手が「不得意とする動き」、「症状との関連のある動き」に対して、関節の機能異常を探ります。
例えば、サーフィンでレギュラースタンス(左足前右足後ろ)よりもグーフィースタンス(右足前左足後ろ)の場合、右足で膝を伸ばす様にキックする動きが含まれます。
つまり大腿四頭筋の神経の発火が遅い場合、タイミングが遅れ、波に飲まれてしまいます。
四頭筋の発火が正常で、筋力もあったとしても、体幹の右回旋ができなければ、四頭筋の収縮に対して体幹がぶれてしまいます。
四頭筋も体幹も上手く動いても、肩のひっかかりがあると、足や体幹のダイナミックな動きに対してバランスを取るための腕の動きが制限されることになります。
つまりただバランスのトレーニングと言ってもだめなのです。
スポーツにおいても重要なのは動的なバランスです。
動的なバランスを考えた時にとても重要なワードは
「予測的姿勢調節 : anticipatory postural adjustment : APA」という言葉を用いてその違いを一つ紹介できたらと思います。(先行随伴性姿勢調節などとも言います)
予測的姿勢調節というのは、
目的とする動作をスムースに遂行するために同時に駆動される姿勢調節機能です。
これは以前、肘や手の痛みでもご紹介しました。
身体は手の位置的変化に会わせて、バランスを取る様に足の筋収縮を調整したり、背筋に前もって力を入れる準備をしたりと、目的の動作の0.1秒前から0.05秒の間で姿勢調節postural setを行っています。
先ほどのサーフィンで言えば、ボードをキックする際の足の動きに対する体幹の動き、さらには腕の動きは、ボードをキックする前に始まっているということです。
ボクシングで言えば、拳を突き出す際の、足の踏ん張りでしょうか。
重心移動も同じです。重心を移動して行く際には、足裏と地面との接触の変化にはじまり、膝や股関節、仙腸関節の各関節が、どこかの可動域制限が起こる前に緊張を来してきます。
それも重心を移動する前にすでにその関節は準備を始めています。
つまりはある関節に問題が起こっている場合、重心の移動すらまともに行えないのです。
当院では、数mm、数°の小さな関節の動きを検査する技術を用いて、五輪金メダリストのようなトッププロからサンデーアスリートたちのコンディショニングを行っています。
毎日の運動が少しでも気持ちよく行えるようなサポートができたらと思います。
にしむら治療院 西村 公典
東京都港区芝5-27-5山田ビル503
03-6435-2437 nishimura@hari.space
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