膝の痛み 膝の水はくせになるのか |
膝の痛みが続き、病院に行くと膝にたまっていることがわかり、水を抜く。
これは一般的に行われている治療です。
水を抜いた直後から、今まであった腫れぼったい感覚や、可動域の制限、痛みが引くことを経験した人はたくさんいらっしゃると思います。
関節穿刺と呼ばれる水を抜くことは効果的ですが、注射針を刺すのは痛いし、喜んで受ける人はいないでしょう。
そんな関節穿刺、これが「癖になる」という噂をよく患者さんから耳にします。
「膝の水を抜くことは癖になるのか?」について症例を交えて考えて行きたいと思います。
個人的な経験では「膝の水を抜くことは癖にならない」です。
炎症が引き、問題が改善されれば、水はたまらないからです。
つまり、膝が動きやすくなる、足が軽くなる、痛みが緩和するような治療を施せれば水はたまらなくなり、注射を繰り返す必要はありません。
注射を続けていた患者さんが注射を続ける必要なく痛みが改善した症例を二人ご紹介します。
70代女性:三ヶ月もの間、水を抜き続けたが痛みも膝の水も治まることがなかった。
幸い、リウマチの検査も陰性で、変形は多少はあるものの、MRIにおいて半月板が損傷をしている様子もないと主治医から診断される。
当初痛かった右膝をかばっているうちに左膝が痛く腫れだし同様に水を抜くこととなる。
セカンドピニオンすると手術しかないと言われるが、最初の主治医は手術は必要ないが、体重を落とさなければならないと、かかるドクターによって診断も治療プランも異なるので疲弊していました。
一つ一つ良い変化を追いながら治療を進めましょうと説明し、施術を行いました。
まずは起こっている現象の把握です。
最初痛かった右膝はいつの間にか水はたまっていない様子(膝蓋跳動陰性)で、左膝は現在も水を抜いている段階。(通院中の整形外科と併用して当院に来院)
膝の痛みは後に痛くなった左側がより痛く、右側はまだ我慢できる。
痛い部位は内側側副靭帯部分である、膝の内側。これは両足とも同じである。
右膝の可動域は仰向けで膝を曲げると120°とやや固い程度。
左膝はと言うと95°と直角を過ぎたくらいで膝がガチッと止まる。
そして膝の内側に痛みが走る。
うつ伏せで曲げると、右膝は95°で固くなり止まる。でも弾力はある。
左膝は仰向け同様に95°で止まる。止まるよりむしろ蹴り返されるような反動がある。
仰向けで足の上がり方(SLR test)を見ると、両足ともに30°でもも裏が突っ張る。
まずはこのガチッとした感覚は膝の内部で何かがひっかかることが考えられるため、このロックした感じがとれるようになること、うつ伏せでも可動域を保つこと、SLRでの足の上がりを軽くすることをメインとして治療計画を立てました。
仙腸関節の動きを検査し、左は腸骨の前方に制限を認め、右は後方への動きに制限が見つかりました。
仙骨は左が大きく下方になり、上に上がりません。
腸骨と仙骨の動きを治療すると、膝のガチッとロックした感じから重く止まる感じへと変化がありました。
全体の身体のバランスはこのような感じで、左の上部腰椎も情報への動きの制限が見られたため、そこも治療を行いました。
すると左の膝の重い感じも抜け、105°まで曲がる様になりました。
仰向けで膝の動きも良くして行きます。
SLRも60°以上まで上がる様になり、患者さんも足がすごく軽いと喜んでいました。
膝の内旋への動きの時に内側の側副靭帯の緊張が見られたため、その周囲に軽い牽引をかけながら回旋を誘導して行きます。
するとロックの抜ける感じがまた見られ、歩行してもらうとスムーズに歩ける様になりました。
その後の注射以降水がたまらなくなり、もう2回ほどの治療でほぼ問題なく過ごせる様になりました。
まずは右膝の痛みは骨盤の回旋のストレスを膝で受けていたと考えられます。
その膝をかばううちにトレンデレンブルグ歩行のような骨盤の傾斜がうまれ、
仙骨の動きの制限と上部腰椎の圧迫から左膝に向かう、大腿神経と座骨神経のストレスが起き、膝の問題へと波及したと考えられます。
水がたまる状況は右と左では異なるため、しっかりと動きや神経の流れを検査しながら治療することが大切です。
膝の痛みにお困りの方に少しでもお力になれれば幸いです。
にしむら治療院 西村 公典
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