2012年 07月 26日
恐怖の記憶を消す薬 |
八月号の日経サイエンスに「恐怖の記憶を期す薬」という題で心的ストレス障害などの薬物治療が可能になる時代が来るかもしれないという話が掲載されていた。
はっきりしないが確実に存在する様々な症状、つまり心的外傷ストレス障害PTSDの患者は、特定の状況や刺激(開けた場所、人込み、突然聞こえてくる大きな音など)を何らかの苦痛に結び付けてしまっており、そうした状況を極力避けようとする。
恐怖症や強迫性障害だけでなく、依存症や難治性疼痛でさえ、学習と記憶、もっと具体的には忘却の障害だとみられている。
特定の場所や状況で、気持ちが高ぶってしまうのを止められない人もいる。
記憶とは感じたことをタダ保存するだけのプロセスではないことが、最近の研究でわかってきている。
それは細胞レベルでの動的な活動の連続であり、薬や認知療法によって操作することが可能な、現在進行形の心理的プロセスである。
神経科学者サックターは不快な刺激を学習させたラットの海馬にZIPという化合物を注入し、恐怖が消えていることを見出した。
ZIPはPKMzetaと呼ばれる長期増強を行う上で必要なタンパク質を阻害する薬である。
ZIPはPKMzetaの持続的な作用を止め、それだけでまるでハードディスクを再フォーマットするかのように記憶を消してしまう。
この薬を脳に入らず、脊髄だけで作用するように科学的に改変できたら、慢性疼痛患者が軽くつつかれるだけで過敏に反応し、痛みを感じることへの治療に使える可能性もある。
疼痛反応も一種の記憶である。
長期記憶は、感情を大きく動かされたり、恐ろしかったりした出来事に関連して形成されることが多い。
それは神経伝達物質の「ノルアドレナリン」が放出され、扁桃体という脳領域でのタンパク質合成が活発化するためである。
ノルアドレナリンのレベルを下げることができれば長期記憶の形成を妨げることができる。
もっともよく知られているのはβ遮断薬のプロプラノロールで、高血圧の治療に広く使用されている。
プロプラノロールによって記憶に伴う感情価、つまり感情がその人にとってもつ意味だけを消した。
しかし、2011年に報告された追跡調査では、この仮説の裏付けは得られなかった。
それはこの実験自体が現実社会で行うことが困難であるためであった。
記憶のメカニズムが解明されてきたことで、認知療法などの治療方法も確立されてきた。
我々徒手療法家も、記憶のメカニズムを理解した施術方法や雰囲気作りが大切であることもわかった。
はっきりしないが確実に存在する様々な症状、つまり心的外傷ストレス障害PTSDの患者は、特定の状況や刺激(開けた場所、人込み、突然聞こえてくる大きな音など)を何らかの苦痛に結び付けてしまっており、そうした状況を極力避けようとする。
恐怖症や強迫性障害だけでなく、依存症や難治性疼痛でさえ、学習と記憶、もっと具体的には忘却の障害だとみられている。
特定の場所や状況で、気持ちが高ぶってしまうのを止められない人もいる。
記憶とは感じたことをタダ保存するだけのプロセスではないことが、最近の研究でわかってきている。
それは細胞レベルでの動的な活動の連続であり、薬や認知療法によって操作することが可能な、現在進行形の心理的プロセスである。
神経科学者サックターは不快な刺激を学習させたラットの海馬にZIPという化合物を注入し、恐怖が消えていることを見出した。
ZIPはPKMzetaと呼ばれる長期増強を行う上で必要なタンパク質を阻害する薬である。
ZIPはPKMzetaの持続的な作用を止め、それだけでまるでハードディスクを再フォーマットするかのように記憶を消してしまう。
この薬を脳に入らず、脊髄だけで作用するように科学的に改変できたら、慢性疼痛患者が軽くつつかれるだけで過敏に反応し、痛みを感じることへの治療に使える可能性もある。
疼痛反応も一種の記憶である。
長期記憶は、感情を大きく動かされたり、恐ろしかったりした出来事に関連して形成されることが多い。
それは神経伝達物質の「ノルアドレナリン」が放出され、扁桃体という脳領域でのタンパク質合成が活発化するためである。
ノルアドレナリンのレベルを下げることができれば長期記憶の形成を妨げることができる。
もっともよく知られているのはβ遮断薬のプロプラノロールで、高血圧の治療に広く使用されている。
プロプラノロールによって記憶に伴う感情価、つまり感情がその人にとってもつ意味だけを消した。
しかし、2011年に報告された追跡調査では、この仮説の裏付けは得られなかった。
それはこの実験自体が現実社会で行うことが困難であるためであった。
記憶のメカニズムが解明されてきたことで、認知療法などの治療方法も確立されてきた。
我々徒手療法家も、記憶のメカニズムを理解した施術方法や雰囲気作りが大切であることもわかった。
by kosuke-n
| 2012-07-26 19:52
| 脳科学・心理学