2016年 10月 26日
両肘のテニス肘、左右ともに同じ治療方法で良いと思いますか? |
先日、国立障害者リハビリテーションセンターでの卒後研修を任されました。
冒頭で治療の理論についてお話ししていただきたいという声がありましたので、テニス肘や腱鞘炎の治療を例にしてお話しさせていただきました。
例えば、ギター、三味線、バイオリンなど音楽をしている患者さんが、両肘ともいわゆるテニス肘を患って来院したとします。(スポーツでも同様に考察します)
あなたは右肘も左肘も同様の治療を施しますか?
私は右手と左手の使い方が異なる以上、治療方法も異なると考えています。
ではそれはどのようにして評価し、治療方法を決定しますか?
理学検査・整形外科検査を使って治療方法を選択できますか?
理学検査・整形外科検査はテニス肘であるということを判断するに過ぎないため、治療方法の選択には結びつきません。
ではどうやって治療方法の選択と結びつく情報を得ることができるのか、それが触診と機能検査です。
講習ではこうして触診の授業へとすすみました。
今日は肘の治し方について説明を交え、テーラーメード医療を実践します。
実際にいらっしゃった方を例にして紹介します。
三味線を数年間習っていた方で、演奏会前の激しい練習により両肘ともテニス肘、右手首の痛み、左肩の痛みがありました。
右と左で分けて考えてみます。
右側:右股関節の痛み・右腕から肘にかけての痛みと右手首の痛み。
左側:症状は、左肩の痛みと可動制限、左肘の痛み。
これだけ左右の症状が違っていても同じような治療方法でよいと思いますか?
三味線の先生がいらっしゃっていたこともあり、身体の使い方はある程度教えていただいていました。
身体の動かし方において右腕と左腕を比較します。
右手は手の平を下に向ける(肘を回内)様にし、前腕で三味線の胴の部分を固定し(肘の伸展、肩は下げない様にする)、ばちを水平にしてたたく(肘の回内)
左手は耳元で弦を押さえる様にするため、肘を曲げ(肘を屈曲)、手の平を自分に向ける(肘の回内)。
弦を押さえる手は、耳の横から棹のある身体の前まで移動する。
この移動は肩の外旋位から中間位に戻すような使い方をしているようである。
脇が開いてしまうと、指の向きが変わってしまうので、基本は脇を開かないでおくそうである。(肩の外転はあまりしない)
まとめると、
右:肩を下げないで、肘の軽度伸展位での回内運動
左:肩は軽度外転位の外旋、肘の屈曲位での回内運動
これができるかどうかによってこの患者さんの肘の痛みの治し方が変わってきます。
触診と機能検査からの考察
右:右肩下がり(三味線の胴の固定を身体の傾きで行っていた模様)、身体が右に傾き、右の股関節に圧迫が強くかかり、右股関節の機能が制限し、痛みを発生。
右肩が下がり、頚神経が引っ張られ、右肘の神経痛を発症、その後も続いた練習により肘の機能制限からテニス肘に発展。
肘の回内制限がある中で撥を叩こうと無理をして手首の尺屈を起こし腱鞘炎になる。
左:肩があがり、脇が開きやすくなり肘の屈曲が制限され、肘の機能制限を起こし始める。
それでも弦を押さえる指に力を入れようとすればするほど、肘と肩はこわばり痛みを発症。
ここまで問診・検査・触診で考察したものを治療しながら検証して行きます。
右の胸椎と股関節を緩め、頚神経にかかっている緊張を緩める。
頸椎の検査と治療
左肩のモビリゼーションと、両肘の牽引法を用いて肩の可動性と肘の可動性を改善させる。
右手首の治療
「よく腱鞘炎はすぐには治らない」と言われ、治療効果を確かめられずに様子を見られる治療院が多いようですが、評価と治療法が合えば、必ずその場で治療効果が出ます。
実際の施術は検証でもあり、上手く行かなければ全く変わらず、上手く行けばその場で変わります。
今回もその場で痛みが全くなくなりました。
もちろん演奏をするとまだ痛みがでるので、完治までは3回の治療が必要になりましたが、数ヶ月感治らなかったのが一回目からほぼ痛みがなくなるためには、やはり、問診・検査・触診がなければなりません。
手の痛みでお困りの方に少しでもお力になれれば幸いです。
国立障害者リハビリテーションセンターでの講師のご依頼、誠にありがとうございました。
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西村 公典
by kosuke-n
| 2016-10-26 14:45
| 徒手医学